犬猫病気百科 神経疾患1 後頭骨形成不全

頭蓋骨は、脳を守るためのヘルメットと同じです。
ただ、そんなヘルメットにも、太い脊髄神経を通すための穴は必要です。
この病気は、その脊髄神経を通すサイズの穴が、生まれつき大きすぎることによる障害です。
本来、成長にともなって適切なサイズに閉鎖されるはずの後頭骨の形成が十分でないために、
脳にかかる圧力が変化し、痛み、けいれん、てんかん発作などの症状を示します。
小型犬、とくにマルチーズ、ポメラニアン、チワワ、ヨークシャーテリアなどに多く見られます。
遺伝的な病気なので、両親、兄弟、そして交配した場合は子供にも、同じ病気が出る可能性は高いです。
発病の時期は、その子によって違います。
生後半年の子もいれば、10才を越してから始めて症状が出る子もいます。
必ずしもこの形成不全を持ったすべての子が、症状が出るわけではありません。
しかし、たとえ今症状が出ていなくても、頭に負担がかかったり(転倒、落下、ケンカなど)、
極度のストレスなどをきっかけにして、てんかん発作を起こす可能性は高いのです。


犬種、および飼主さんの話だけで、ほぼ診断が可能ですが、きちんとレントゲン検査をすれば確定診断となります。
痛みをともなっているときは、軽い鎮静剤の投与が必要なこともあります。
次の図のように、頭蓋骨の後頭部の穴(後頭孔)の大きさがポイントです。
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頭を後から撮ったレントゲン写真。本来の後頭孔は、赤丸の部分。
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横から撮ったレントゲン写真。水色は脊髄神経の部分。
本来の穴のサイズは、赤丸の部分。
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治療によってたいていは数日以内に回復して小康状態となりますが、
一度発症すると、それ以後は一生、気を付けなければいけません。
重症の場合は、盲目や痴呆、旋回運動などの危篤な後遺障害が残ったり、
てんかん発作から目覚めない、もしくはてんかん発作により、死に至ることもあります。
てんかん発作を起こし続けている状況のときは、鎮静剤や鎮痛剤、
場合によっては軽い麻酔剤などで、発作を抑えます。
てんかん発作を起こしている最中は、脳の圧力が上がり、
脳への酸素の供給が極端に減るので、発作を起こしている時間の分だけ脳細胞が死滅します。
ですから、小さな発作も繰り返せば繰り返すほど、寿命は縮むと考えてください。
もちろん、大きな発作1回で死に至る可能性もあります。
てんかん発作を起こしたあとは、脳の圧力を下げる薬を使います。
また、てんかん発作が連続して起こらないように抗てんかん薬を用いることもあります。
通常、1ヶ月に1回以上発作を起こすときは、毎日かかさず抗てんかん薬を服用するよう薦めています。


転倒、落下、ケンカなどで頭に負担がかかったりしないよう気を付ける。極度のストレスがかからないようにする。
天候の急激な変化で発作が起こることもありますし、花火や暴走族、雷なども、きっかけになりやすいです。
また、うれしくて、もしくは怒られて興奮するのも良くありません。
家で、来客に反応してキャンキャン吠える子は、飼主さんがまずだっこして、来客を迎えましょう。
留守にしていて家族の人が戻ってきたときにキャンキャン哭いて喜んで、クルクル回るような子は、
玄関先でまずだっこして、落ち着いてから下に降ろして着替えるとか、そうゆう注意点は必要です。


そもそも小型犬は、小さい子同士を交配して、人間が意図的に作り出した犬種です。
悪い言い方をすれば、未熟児のような子を作ってきたのです。
この後頭骨形成不全もその中で出て来た障害なので、この病気を持った子は、繁殖に用いることは薦めません。
お産自体もストレスになって、その子が危険になるだけでなく、生まれた子供にその障害が出る可能性が高いからです。
女の子は、発情期がストレスになることがありますし、男の子は隠睾(潜伏睾丸)であることが多いので、
早い時期に去勢避妊手術をしておくことをお薦めします。
てんかん発作が頻繁になってからでは、手術ができないこともあるからです。

